「好きだなこういうハジけ方って。」
ジャズシンガーのホリー・コールのこのアルバムジャケットは、何度見てもそんな新鮮な気持ちを与えてくれます。
一般的にジャズっていうと薄暗く、スモーキーなジャケが多いでしょ?そんななかでモダンな印象のこのジャケはとても新鮮。
それは、このアルバムがジャズはもとよりポップスをジャズアレンジした曲が多いことと関係があるのかもしれない。
でも、今日取り上げるのは、このアルバムのジャズスタンダード。
イントロのピアノからしてどうですか、この美しさは。こんなに広がるピアノから始まって、本編に入るととてもソリッドな演奏。
このギャップがまた堪りません。
もちろん彼女の歌はとても素晴らしくて、声量、表現力はもちろんのこと、その濡れた歌声から醸し出されるお色気もスゴイ。私なんかは、この曲のようにスイング感覚のある曲での彼女の歌い方には鳥肌が立ってしまいます。
ジャズって文化が薄いからか、日本では一般の人からあまり聴かれることのない彼女の名前ですが、ジャズに限定しなくとも間違えなく現代の最高シンガーの一人です。
彼女の本格的な“ポップ・アルバム”ってのも、もしあるのならば聴いてみたいっと思ってしまう私メです。
That Old Black Magic / Holly Cole
Lost Paradise / Joanna Wong
2000年に、ノラ・ジョーンズの『Come Away with Me』がブレイクしてからっていうもの、“ノラ・ジョーンズっぽい”ってのが、何やらひとつのジャンルとして確立している趣があります。
確かに、それだけのインパクトはあったし、カントリーとジャズの中間をいくことで、何よりも「JAZZ=堅苦しい」って印象を拭い去るような気楽さ(ポップさ?)があったような気がします。
今日の彼女、ジョアンナ・ウォンもそんなフォロワーのひとりでしょう。ただし、他のフォロワーたちと違うのは、彼女が中華圏出身ということ。アルバム全体が東洋的な湿っぽさと、アメリカンなドライさの同居といった雰囲気でとても心地よいのです。
で、この曲は、アルバム2曲目のナンバー。
リムショットの小粋なテンポがおしゃれで、そこに流れるオルガンの音に彼女の声とアコースティックギターでちょっとだけ飾り付けをしてある曲。
本当にシンプルなアレンジだけれど、これが彼女のちょっとスモーキーな声とはとてもよく合っています。
ボーカル面では、サビではコーラスを入れて厚みを出し、最後の細微の前、メロが変わる部分ではダブルトラックでドライさをかもし出すっていうアレンジも。
本来、正統派のジャズではなかなか聴かれないダブルトラックの手法に彼女(それともプロデュースした親父さん?)の感性の高さ感じてしまいます。
ノラ好きの中には、ボーカルメインって方もいるとは思いますが、彼女の場合、バンドサウンドの中のボーカリストって考えたほうがよいかも。
私は好きです、とってもね。
Is You Is Or Is You Ain't My Baby? / Nicki Parrott
久しぶりに聴きました、こんな“王道”な音楽を奏でるデビューアルバム。
“王道”・・・最近はなんだかとっても居心地の良くない言葉になりつつありますが、私は好きです。そりゃ、実験的なアバンギャルドさもゲージツの発展や演奏技術の向上には必要だけれど、王道と言われる音にはポップな魅力がたくさん詰まっています。
っで、そんな珠玉な音たちがひしめくこのアルバムから、今日はリズムがとってもすばらしいこの曲。
この人、実はベース弾きのボーカリスト。そんなわけで、この曲でも奇をてらわない演奏を披露しています。
ベースはやや控えめながら、ドラムやピアノ、ギターのしっかりと引き立てる、正に王道なスタイル。
そこに彼女のセクシーで濡れたボーカルが乗っかれば、最高の組み合わせになってしまうのです。
そして、隠し味はテナー・サックスのハリー・アレン。
彼のリーダー作も大好きな私には溜まりません。
コレだけそろえば、この曲の持つウェットな雰囲気がムンムンと表現されていることはわかっていただけるのではないでしょうか?
そうそう、“王道”のウンチクでもうひとつ。
ベタなことをやるには、上手くないとカッコよくないんだよね、これが。
Day By Day / Jaye P. Morgan
とっても色っぽいジャケットに目を惹かれてしまう・・・所謂、「古きよきアメリカ」ってのを体現したかのようなこのジャケ。
正直に言いますが、私はこのジャケに惹かれて買ってしまいました。
そんな中から、今日はこの曲。恐らく私も含め、多くの日本人にとってスイング・ヴォーカルってこんなイメージなんじゃないでしょうか?
ビッグ・バンドの演奏をバックに、艶やかな声を時折張り上げて歌う姿は、私のイメージのそれそのもの。
前半で押さえ気味に歌う彼女にトランペットが絡んでくる部分と、後半で全開に盛り上がったバンドをバックに彼女がちょっと巻き舌気味なボーカル(ネイティブだから当たり前だけど・・・)で声を張り上げる部分は、ホント鳥肌モンです。
硬苦しさは微塵もなく、純粋に当時のポップミュージックとしてのジャズを感じることのできる1曲です。
それにしても、このアルバムもそうなんですが、ここまで高音質化処理され半世紀前の名盤が期間限定とはいえ新品1000円で売られているなんて・・・十年前にはまず考えられなかったなぁ。
Wild Horses / Tim Ries
このアルバムは、そもそもの企画自体が面白いですよね。
ストーンズのツアー・メンバーがそのツアー中に暇を見つけてセッションした内容とのこと。なんで、どちらかというと内側からいつもと視点を変えて見たカバー集といった感じ。かなり新鮮でした。
っで、この名バラードはこのアルバム中の唯一のボーカル・ナンバー。歌っているのは、なんとノラ・ジョーンズなのです。
ここでは、彼女の1st.アルバムのような雰囲気で、吐息交じりのセクシーな歌声を披露してくれています。
バックの演奏は、音数が少なく、無駄のないハープとレンジが狭く、印象的な音を奏でるギターが中心でとってもシンプル。ドラムなんかもうっすらとリズムの抑揚をつけているぐらいだしね。
そして、ティム自身のサックスは要所ゝで、まるで泳ぎ回るかのごとく歌い続けます。ボーカル・ナンバーなのでもう少し抑えてもよいかも・・・なんて、思ってしまいますが、あくまでも彼が主役なんでね。
それにしても、特にこの頃のストーンズの曲って、アーシーな部分も多くて、現代風なジャズにするのは難しいと思うのだけれど・・・この人たちはホントにすごいなぁ。
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