誤解を受けないように先に断っておきますが、私は決してアイドルが好きなわけではありません。そして、この人もこの曲意外はあまり・・・。
でもね、この曲はホントすごいです。
私も最初に聞いたときは鳥肌モンでした。
とにかく今日の曲は、和製ポップスの最高峰だと思います。
この曲のメロディーと色々なエッセンスは、「本当にアイドルのための歌か?」っと思わせるほどのものがあります。
まずはメロディー。このサビのメロディは本当に素敵です。言葉のリズムとメロディーの響きにブレがなくて、すんなり耳に入ってきて脳裏に焼きついてしまいます。
この辺はまさに作曲者の鈴木慶一(ムーンライダース)さんの才能なのでしょうか?
そして、演奏面でもAメロのギターのカッティング、かなりカッコいいです。当時流行っていたフュージョンなんかでも良く使われていた、コンプとコーラスをかけた音作りで目立たずもリズムを引き立てています。
80年代特有のリバーブ感はあるものの、要所以外はシンバル類を抑えた使い方のドラムも雰囲気を作ってくれます。
普段は耳障りに感じることもあるシンセで作ったオルガンっぽい音も、この曲では見事に曲のイメージにあっています。
そして、コーラス・ワーク。
これって、もろに昔のガール・グループなんかで良く使われていたパターンです。シュレルスやロネッツっぽいやつね。
こんなに素敵な要素が混ざったこの曲、雰囲気的には竹内まりあの「マージービートで唄わせて」に近いものがあるかもしれません。
あの曲では、タイトルどおりマージー・ビート勢を感じさせる部分がありますが、この曲は、マージー・ビート勢に影響を与えたフィル・スペクターの一派と同じ香りがします。
とにかく、珠玉のポップ・ミュージックであることは間違いありません。ぜひ一度、耳を傾けてみてください。
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Winterスプリング Summerフォール/ 渡辺 美奈代
Let Me Go / Sonya Kitchell
「『ノラ・ジョーンズ』に似てる!!」って言われたら、やっぱり本人はいいきもちはしないのかなぁ。
でも、第1印象は正にそうでした。
ちょうど、ノラの陰影をもう少し色濃くした感じ。
これで、弱冠16歳なんて、なんてオマセなんでしょう。
そして、この曲、全体的にアコースティックな作りで、いかにもアメリカンな乾いたギターのストロークと、ジャズの録音手法を応用したかのようなピアノの音。この2つがこの曲の耳障りを確実に良くしています。そして、サビの部分では、近めに聴こえるマラカスの音が実はポップへの隠し味。とても効果的に効いています。
そして、それらに寄り添うように彼女の吐息交じりの歌声がとても素敵です。所謂、声を張り上げて歌う「ボーカリスト」ってタイプよりは、押さえ気味にメロディーを口ずさむシンガー・ソングライターのようなタイプなようです。
表現力がどうこうよりも、聞き手が自然とリラックスしてしまう・・・そんな音楽なのです。
ノラ・ジョーンズの成功以降、アメリカではフォーク・ジャズ・ブルースなどトラッドな音楽をミックスして、その垣根を感じさせないようなミュージシャンが次々に出てきているようですね。
私としては、こういったごった煮のような音楽は大好き。
ちなみに、このソーニャ・キッチェルもこんなに素敵なポップなのに、CDショップではジャズとして扱われていることが多いようですが・・・それもいかがなものかと感じる今日この頃です。
What Do You Do? / The Bonzo Dog Band
思わずジャケ買いしてしまいましたが、彼らのことは名前を聞いたことがある程度しか知りませんでした。
そして、購入後初めて彼らの音楽を聴いた印象は、「とてもコミカルで、楽しいポップス」ということでした。
実験的な要素も持ちつつ、全体の印象はとてもポップなのです。
特にこの曲では、それを感じずにはいられませんでした。
メロディーラインは、所謂マージービートの延長のような感じ。
演奏面だって、ごてごてのサイケのように目新しい技術が駆使されているわけでないのです。むしろ、バックで牧歌的なホーンが聞こえたりして、どちらかといえば英国のトラッドな部分が色濃いかもしれません。
だけど、ここで聴こえるボーカルの左右の振り分け(ひとりのボーカリストが左・右・中央の3方向から畳み掛けてくるのです)は、かなり革新的なのではないでしょうか?
そして、ベースの使い方。イントロのフレーズとサビ以外ではずっと4分音符を刻むのですが、その響き方がとても特徴的。ある意味この曲のサイケなイメージをぐっと盛り上げています。
終盤のピアノフレーズだって、それまでまったく出てこなかったパートがここでいきなり前に出てきて、まったく違ったメロディを奏でるなんて・・・。
世に流れている情報量も多くないのですが、どうやらビートルズとの交流も少なからずあるらしいです。
これらは間違いなくそんな交流の影響もあるのでしょう。
とにかく今まであまり体験したことのない音楽でした。これは、1度ハマるとクセになりそうです・・・。
眩しいひと / Karla Bonoff
この人って、実は私たち世代にはなじみの薄い人なのかもしれません。
80年代ポップスもリアルタイムでは経験していませんし、最近のS.S.W.の再評価の流れの中でもなかなか彼女のことを取り上げた記事に出会うことはありません。
実際、私自身も以前から彼女の名前を知ってはいたものの、この80年代チックな(実際には79年だけど)アルバムジャケのために購入をためらう日々が数年前の購入時まで長く続きました。
しかし、実際聴いてみるとどうでしょう。
かなりの佳作ぞろいなんです。
特にこの曲はすぐに私のフェイバリットとなりました。
今日久々に聞いてみてもとても新鮮!!
実はこの曲、あのマージー・ビート勢の一角サーチャーズの曲で、こっちは私も十代の頃から大好きな曲のひとつでした。
そして、このカーラのバージョンはそのオリジナルバージョンを踏襲し、原曲の持つ魅力をさらに引き出した好演曲。
有名なこのギターリフも時代に合わせて、歪みがかった音にして、そして、バッキングではパワーコードなんかも入れちゃったりしちゃって・・・カッコいいです。
もちろん彼女のボーカルも複数のコーラスとともにぐっと前に出てくる最後のフレーズでの声の張り上げ方が素敵。彼女の曲は、どちらかというと静かに歌い上げるタイプの曲が多いので、こういった曲がキラ星のように輝いて見えるのかもしれませんね。
ちなみに、この曲には当のサーチャーズのメンバーも参加しているとか、いないとか。真相はわかりませんが、それだけオリジナルの演奏者にも好意的に受け取られたカバーだということは間違えないようです。
You Get Me / Michelle Branch
アルバムの2曲目の曲って、実は意外にも好きな曲が多いのです。
たとえば、T.Rexの「Slider」の「Mystic Lady 」、ドミノスの「Layla」の「Belle Bottom Blues」、リトルフィートの「Sailin' Shoes」では「Cold Cold Cold 」っと、単なる偶然かもしれないけれど、2曲目は隠れた名曲が多い。
そして、この曲もミシェル・ブランチのデビューアルバムの2曲目。
この曲はなんといっても古典的なS.S.W.的なメロディーとデジタルな音作りの融合がとても素敵なのです。
一見、無機的なデジタルのビートに対し、生ギターの響きと彼女のささやくような声が聴けるAメロ、デジタルでゴテゴテに処理されたバック・ボーカルとシンプルなエレキ・ギターが曲を盛り上げるBメロ以降といずれも聴いただけでは、不安に思ってしまうのだけれど、これが見事にはまっている。
こういったある種実験的なことができるのも“2曲目”だからかもしれません。
このアルバム時、彼女は18歳。
その後2ndアルバムまで発表していますが、それから数年がたっています。少し大人っぽくなった現代の彼女の歌を聞きたいのは私だけではないはずです。誰か彼女にこの思いを伝えてください・・・。